1.はじめに

本チュートリアルでは、すべり有境界条件を活用し、液体及び気体が接する領域において、慣性力がより支配的である液体の流体解析を実施します。本手法では、さざ波のような現象を捉えることはできませんが、本仮定を用いると、船舶などの抵抗力の大部分を占める水中の流れ場及び抵抗力の予測が可能です。

ここで利用するヨットの元CADモデルは、GRABCADにて公開されているものです。リンク切れ等でGRABCADからダウンロードできない場合は、こちらからでもSTLファイルを直接ダウンロード可能です。本チュートリアルでは、『CAD(STL)モデルとその最適化』を参考にダウンロードしたSTLファイルを修正します。特に、再メッシュを施し、極端な値のアスペクト比を有するメッシュがなくなるように調整します。

ここで紹介するシミュレーションに必要な全ての入力ファイル(修正後のSTLを含む)は、以下からダウンロードできます。

また、本シミュレーションは、一般的なIntel COREi7搭載のノートパソコン上で、最大並列数(parallel)を用いて、1000ステップ1分程度の計算速度です。

2.計算対象・境界条件

下図のような境界条件設定画像ファイルのbcXY0.bmpと、今回用いるCADモデルを用いると、下図のような計算領域が構築されます。今回は、青色境界を流入境界条件、緑境界をすべり境界条件とするように次のパラメータを設定します。

bcXY0.bmp
bcXY0.bmp。

すべり境界とは、境界面垂直方向(今回はY方向)の速度成分のみがゼロで、水平方向の速度成分への境界の影響は無い境界条件です。液体と気体の界面では、気体の流体運動は液体の流体運動へ影響を与えずに、また界面の位置は一定(さざ波などもない)という仮定に基づく境界条件です。今回は、緑で指定する流入条件にすべり境界用のパラメータを設定することでこのような境界条件(液体と気体の界面)を実現します。

bcXY0.bmpと追加CADモデル(bc.stl)から構成される計算領域。
bcXY0.bmpとCADモデル(bc.stl)から構成される計算領域。

3.計算パラメータの設定

以下は、本シミュレーションにおいて特に大事なパラメータについての説明です。一般的な計算パラメータの説明は、こちらをご覧ください。

  1. cmode

    0の流体解析モード(密度一定の液体、及び気体用)

  2. lx

    風洞のx方向サイズは7m。

  3. ly

    風洞のy方向サイズは1.5m。

  4. lz

    風洞のz方向サイズは1.5m。

  5. nx、ny、nz

    格子点数は、各自必要な空間解像度を考慮して決定します。本チュートリアルでは、(nx, ny, nz) = (200, 50, 50)とし、Y及びZ方向に少し細かく格子点を設けています。これは、Y方向及びZ方向の流速の空間的な変化がx方向に比べて大きいと予測されるためです。

    各方向の格子点数を変化させ、計算時間や得られる解などを比較してみてください。可能であれば、より高い空間解像度(多い格子点数)でのシミュレーションを実施してみてください。

  6. rhoW

    流体密度は、水の物性値(997 kg/m^3)を使用。

  7. uinB, vinB, winB

    プリセット・カラーの青色で指定した流入流速は、X方向に10m/s。Y方向速度成分(vinB)及びZ方向速度成分(winB)はともにゼロ。

  8. uinG, vinG, winG

    プリセット・カラーの緑色で指定した領域上部の境界条件は、今回はX及びZ方向のすべり境界とします。従って、(uinG, vinG, winG)=(-, 0, -)と指定します。詳しくは、計算パラメータの説明をご覧ください。

  9. mu

    粘性係数は、水の物性値(1.0E-3 kg/m/s)を使用。

4.シミュレーション結果

シミュレーション中または、シミュレーション後に解析モードで出力結果を読み込むことで様々な結果の可視化を行うことが可能です。可視化された結果は、カメラボタンを用いることで、jpg形式で保存することが可能です。

水面下の船体表面に掛かる圧力分布。
水面下の船体表面に掛かる圧力分布。

以下は、瞬時のXZ断面速度場、非相関速度ベクトル及びヨットが流体(水)から受ける流体力(抵抗力)を示しています。流体力の計算には、ツールメニューを用います。

瞬時のXZ断面速度場、非相関速度ベクトル及びヨットが流体(水)から受ける流体力。
瞬時のXZ断面速度場、非相関速度ベクトル及びヨットが流体(水)から受ける流体力。