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F1モデルの風洞シミュレーション

2021R2.0以降において、プリセット境界条件が廃止されたので、境界条件設定にbcXY0.bmpを追加しています。

1.はじめに

ここでは、Flowsquare+の並列性能を理解したり、計算コストを抑えるシミュレーション条件の設定方法を学ぶための少々重めのシミュレーションケースをベンチマーク用ケースとして紹介します。

ここで、紹介するシミュレーションケースは、Flowsquare+ユーザーによる解説ページ、『Flowsquare+でお手軽エアロダイナミクスシミュレーション遊び』を参考にし、変更を加えたものです。流体シミュレーションを始めたての方にも分かりやすくFlowsquare+の解説をされています。

利用するF1の元CADモデルは、3Dmag.orgにて公開されているものです。リンク切れ等で3Dmag.orgからダウンロードできない場合は、こちらからでもSTLファイルを直接ダウンロード可能です。本チュートリアルで用いるSTLモデルは、ダウンロードした元STLを『CAD(STL)モデルとその最適化』を参考に修正します。特に、再メッシュを施し、極端な値のアスペクト比を有するメッシュがなくなるように調整します。

Fusion360によるSTLモデルの修正作業。
Fusion360によるSTLモデルの修正作業。

ここで紹介するシミュレーションに必要な全ての入力ファイル(修正後のSTLを含む)は、以下からダウンロードできます。

入力ファイル

また、本シミュレーションは、一般的なIntel COREi7搭載のノートパソコン上で、最大並列数(parallel)を用いて、1000ステップ1.2時間程度の計算速度です。計算コストが大きいので注意してください。


 

2.計算対象・境界条件

境界条件の設定に、上記の入力ファイル内のSTLファイルおよびビットマップ画像を用います。『初めて使うFlowsquare+』を参考に、上記の入力ファイルを用い、本シミュレーションのプロジェクトを開始してください。

ビットマップ画像は以下の図の通りで、プリセット青色で流入条件のみ指定されています。

bcXY0.bmp
bcXY0.bmp

上記ビットマップ画像と今回用いるCADモデルから、以下のような計算領域が構築されます。『境界条件確認・CADモデル編集画面』で適宜STLファイルで指定されるCADモデルの位置などを調整することも可能です(今回の入力ファイルには適切な位置が予め設定されています)。パラメータリストにSTLに関するパラメータが含まれていれば、『境界条件確認・CADモデル編集画面』においてSTLモデルの位置や角度を変更した場合、これらの情報は次回のシミュレーションや分析に向けて保存されます。

ビットマップ画像とCADモデルから構成される計算領域。
ビットマップ画像とCADモデルから構成される計算領域。

今回は、計算コストを抑える観点から、車体の大きさに比べ、シミュレーション領域サイズは2倍程度となっています。しかし、シミュレーション境界の数値的な影響を避けるために、5~10倍程度の領域サイズを考慮することもあります。リソースに余裕があれば、より大きな領域サイズでシミュレーションを実施し、シミュレーション境界の影響を検討するのもよいでしょう。


 

3.計算パラメータの設定

計算パラメータは、他のSTLモデルを用いたシミュレーション例と同様です。

ただし、本シミュレーションはかなり計算負荷が大きく、特に最初の数ステップは非力なマシンでは膨大な時間が必要な場合があります。従って、本シミュレーション条件では、ポアソン方程式の最大収束計算回数loopmaxを40としています。これにより、シミュレーション開始直後の収束計算に伴う残差は比較的大きくなりますが、時間ステップが進むにつれて、残差は減少していき、十分長い時間シミュレーションを実施した場合、シミュレーション結果への影響は無視できます。

一般的な計算パラメータの説明は、こちらをご覧ください。


 

4.シミュレーション結果

シミュレーション中または、シミュレーション後に解析モードで出力結果を読み込むことで様々な結果の可視化を行うことが可能です。本ページのタイトル画像は、シミュレーション結果の可視化図の一例です。

中心断面における速度の絶対値分布の時間変化。

下の図は、本シミュレーションケースを様々な並列数(1、2、6、12、24 並列)で実施した際の、100 ステップ目における 1 ステップ当たりの計算時間と 1 並列に対する計算速度向上率のグラフです(2 つのバージョン、2019R3.1 と 2020R1.0 を比較)。並列性能等の確認にも用いることができます。

様々な並列数に対する計算速度変化。
様々な並列数に対する計算速度変化。

 


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