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水中のカルマン渦数値実験

1.はじめに

本ページでは、大学における流体系学生実験にて比較的よく採用される水中のカルマン渦の数値シミュレーション例を紹介します。様々な円柱直径や主流速度でシミュレーションの実施が可能なので、実際の実験結果との比較も可能です。

円柱直径を変更する場合は、bcXY0.bmp を編集するよりも、シミュレーション領域サイズ(lx, ly, lz)を変更する方が簡単です。例えば、領域サイズを各辺半分にすると、結果的に円柱直径(レイノルズ数)も半分になります。

ここで紹介するシミュレーション実行に必要な全ての入力ファイルは、以下からダウンロードできます。zip ファイルをダウンロードする場合、FSP フォルダまたはその階層以下のフォルダに展開してください。

入力ファイル

また、本シミュレーションは、一般的なIntel COREi7搭載のノートパソコン上で、最大並列数(parallel)を用いて、1000ステップ2分程度の計算速度です。


 

2.計算対象・境界条件

直方体のシミュレーション領域内の一方に流入境界を青色で指定し、少し下流側に、緑色で流速場を可視化するためのスカラー(水中に流す有色インク)の発生源、更に少し下流にカルマン渦の発生源となる固体壁(円柱)を非プリセットカラー又は黒色で設置します。

bcXY0.bmpの概略図。
bcXY0.bmpの概略図。
シミュレーション系。
シミュレーション系。

 

3.計算パラメータの設定

以下は、本シミュレーションにおいて特に大事なパラメータについての説明です。一般的な計算パラメータの説明は、こちらをご覧ください。

  1. lx, ly, lz

    領域サイズは、0.6 x 0.3 x 0.3 (m^3)としました。円柱サイズを変更する場合は、領域全体のサイズを変えると簡単です。

  2. rhoW

    水の密度である1000 (kg/m^3) を設定しています。

  3. uinW, uinB

    初期場及び青色境界からの x 方向の流速は、1.0 (m/s) としました。

  4. uinG, vinG, winG

    緑色境界は、スカラー(水中に流す有色インク)で、流体速度場に影響を与えてはいけないので、全て”-”を指定します。

  5. massfrG

    緑色境界は、スカラー(水中に流す有色インク)の発生源であるため、この位置はスカラー濃度1で固定です。(その他の領域はデフォルトでゼロ)

  6. mu

    水の粘性係数である1.0E-3 (kg/m/s) を設定しています。


 

4.シミュレーション結果

シミュレーション結果動画を以下に示します。色はスカラー(水中に流す有色インク)の濃度で、領域右側に存在する紫色の点は、点計測を実施するプローブ位置を示します。

シミュレーション結果動画。

このプローブ位置における計測結果を以下に示します。灰色実線はスカラー濃度、灰色点線は圧力、黒色実線はy方向速度成分を示し、全ての物理量は、3秒以降の最大値と最小値で正規化されています(0から1の間の値をとる)。例えば、物理量\(q\)の正規化値は、\(q^*=(q-q_{min})/(q_{max}-q_{min})\)と計算できます。

上記の条件設定では、準定常状態に十分遷移してからの時刻において、円柱直径0.06 (m)、主流速度1 (m/s)、3.19秒から4.52秒まで4サイクルなので、振動周波数は3.03 (1/s)であり、これらから得られるストローハル数は、0.18となり、経験値である0.2に比較的近い値を得ることができます。

プローブ位置におけるスカラー濃度、圧力、y方向速度成分の時間変化。
プローブ位置におけるスカラー濃度、圧力、y方向速度成分の時間変化。

 


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